クジラ、そしてマグロ…。「環境保護」という美名のもと、「あれを獲るな!これを食うな!」と欧米諸国が理不尽な要求を突き付けてくる。加えて、シーシェパードなる団体が日本の調査捕鯨船団に執拗な妨害活動を仕掛けてやまない。去る2月15日には、抗議船の船長が捕鯨船に侵入して身柄を拘束された。
「生態系の保護」などというが、その基準が極めて恣意的だ。菜食主義者を除いて、欧米人の多くは朝から牛肉やら豚肉を平気で食べているではないか。(そもそも、「ワシントン条約」などという名前からして、軍艦保有比率が対英米6割に制限された第一次世界大戦後の「ワシントン海軍軍縮条約」を連想させ、気に食わない。)
古式捕鯨発祥地としても知られている和歌山県東牟婁郡太地町では、イルカ漁も行われている。この様子を否定的に取り上げたのが本年のアカデミー賞(ドキュメンタリー部門)を受賞した『ザ・コーヴ』だ。とは云え、イルカ漁じたいはIWC(国際捕鯨委員会)においても認められている。
グローバル化が進展する中で、食文化をめぐる軋轢は今後とも繰り返されるであろう。シーシェパードなどに対して断固たる姿勢を示すことは言うまでもないが、我が国の食文化を学問的に捉え直すことも必要だ。
先日、小林路義先生(鈴鹿国際大学名誉教授)から、『食べることは人生充実の「自己実現」だ』(農林統計出版株式会社)という本を頂いた。愛媛大学農学部の細川隆雄教授がゼミ生たちと行っている捕鯨文化研究のレポートや、日本料理のグローバル化に関する小林先生の論考などが収められている。
小林先生によれば、日本料理の有する「ソフト・パワー」は極めて強力であるという。先日、アメリカの高級寿司店でクジラの握りが供されていたことが明らかになったが、本当に美味ければ欧米人といえども食べるのだ。
抗議船の船長にもクジラを食べさせ、「ソフト・パワー」を見せつけてやればよいと思うのは私だけであろうか…。